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好きな本の好きなシーン 『其面影』二葉亭四迷
好きな本の好きなシーンをちょっとだけ紹介します。
『其面影』二葉亭四迷の、岩波文庫版136ページ。
お互いに惹かれていることが発覚した哲也と小夜子。
でも哲也に妻はいるし小夜子は義理の妹だし、
こういう気持ちは捨ててしまわなきゃ・・・な場面。
***
「いや、もう、好い!」
と益々焦燥しながら、
「僕は最うこのまま家へも帰るまい、出てしまおう。もう如何成っても構わん、これから先は暗黒の世の中だ。は、は、は」
と、妙な笑方をして、
「じゃ、別れよう。その変わり僕あ何だ・・・僕ア別れたって貴女の事は何だ・・・」
と、思い掛けずはらはらと落涙して、
「一生忘れん!・・・」
「兄さん!」
小夜子は思わず縋付いて、
「其様に私の事を思って下すって?」
「思わにゃいられんもの」
と、まだ涙が止まらぬ。
「本当ですか?」
ときっと目が据わる。
「迷惑か?」
と手の甲で涙を拭きながら。
「じゃ、もう、私、私の身体なんぞ・・・」
と息が詰まって、
「如何なっても好いわ、兄さん!」
と縋った手に凝っと力が入ると、わなわなと震い出す。
「えッ?」
と哲也は猛然と振返り、卒然小夜子の肩へ手をかけて、
「如何なっても好い?」
と意気込んだが、小夜子はもう口が利けなかった。
黙って頷くその蒼冷めた面へ、哲也の面が衝と寄るかと思うと、
熱き唇と冷やかなる唇とが、ああ、遂に相接した・・・
***
110年前の文章ですよ!血沸き肉踊る情熱的な恋の描写だと思いませんか!?
脳汁がびゅんびゅん出る感じ。文学読んでて良かった。
「一生忘れん!・・・」の・・・の位置がいいです。
これが「一生忘れん・・・!」や「・・・一生忘れん!」だったら、
また感じが違ってきますね。
結局この後、哲也と小夜子はこっそり付き合い始めます。
その後どうなるかは、まあ読んでみてください・・・
人の道から外れた恋。
破滅へのカウントダウン。
どんな出来事でも、あるシーンをどう切り取るか、どこから光を当てて見せるかによって全く評価って変わるんですよね。それを見る人間がどんな位置からどう見るかによっても、もちろん変わる。
何であれ、そこに一瞬でもこういった魂のほとばしりを感じられれば、それは心の糧になる名作だなって思いますね・・・
『其面影』二葉亭四迷の、岩波文庫版136ページ。
お互いに惹かれていることが発覚した哲也と小夜子。
でも哲也に妻はいるし小夜子は義理の妹だし、
こういう気持ちは捨ててしまわなきゃ・・・な場面。
***
「いや、もう、好い!」
と益々焦燥しながら、
「僕は最うこのまま家へも帰るまい、出てしまおう。もう如何成っても構わん、これから先は暗黒の世の中だ。は、は、は」
と、妙な笑方をして、
「じゃ、別れよう。その変わり僕あ何だ・・・僕ア別れたって貴女の事は何だ・・・」
と、思い掛けずはらはらと落涙して、
「一生忘れん!・・・」
「兄さん!」
小夜子は思わず縋付いて、
「其様に私の事を思って下すって?」
「思わにゃいられんもの」
と、まだ涙が止まらぬ。
「本当ですか?」
ときっと目が据わる。
「迷惑か?」
と手の甲で涙を拭きながら。
「じゃ、もう、私、私の身体なんぞ・・・」
と息が詰まって、
「如何なっても好いわ、兄さん!」
と縋った手に凝っと力が入ると、わなわなと震い出す。
「えッ?」
と哲也は猛然と振返り、卒然小夜子の肩へ手をかけて、
「如何なっても好い?」
と意気込んだが、小夜子はもう口が利けなかった。
黙って頷くその蒼冷めた面へ、哲也の面が衝と寄るかと思うと、
熱き唇と冷やかなる唇とが、ああ、遂に相接した・・・
***
110年前の文章ですよ!血沸き肉踊る情熱的な恋の描写だと思いませんか!?
脳汁がびゅんびゅん出る感じ。文学読んでて良かった。
「一生忘れん!・・・」の・・・の位置がいいです。
これが「一生忘れん・・・!」や「・・・一生忘れん!」だったら、
また感じが違ってきますね。
結局この後、哲也と小夜子はこっそり付き合い始めます。
その後どうなるかは、まあ読んでみてください・・・
人の道から外れた恋。
破滅へのカウントダウン。
どんな出来事でも、あるシーンをどう切り取るか、どこから光を当てて見せるかによって全く評価って変わるんですよね。それを見る人間がどんな位置からどう見るかによっても、もちろん変わる。
何であれ、そこに一瞬でもこういった魂のほとばしりを感じられれば、それは心の糧になる名作だなって思いますね・・・